「部屋を片付けたいのに、どうしても汚くてゴミを触れない」
「不要な物を捨てたいけど、捨てたら後悔するんじゃないかと不安になる」
実は、強迫性障害(OCD)の症状が原因で部屋が汚くなってしまう人は少なくありません。
本記事では、強迫性障害と部屋が汚くなる関係性や具体的な対処法を解説しています。
また、周囲の人ができるサポート方法も紹介しているので、強迫性障害の方やその家族・支援者が「部屋を片付けるために何をすればよいか」がわかります。
目次
強迫性障害とは

強迫性障害(OCD)とは、強い不安やこだわりによって日常生活に支障が出てしまう心の病気です。
自分でも「そんなに気にしなくて大丈夫」とわかっていても、不安やこだわりを消せずに辛い思いを抱えています。
強迫性障害の症状は大きく次の2つに分かれます。
- 強迫観念…自分でも考えたくないような考えが頭から離れないこと
- 強迫行為…強迫観念による不安を打ち消すための行動
たとえば「汚い物を触ったら菌に感染して病気になってしまうかもしれない」という強迫観念により「ゴミに触れない」「何度も繰り返し手を洗う」などの強迫行為が引き起こされます。
参考ページ:
強迫性障害|こころの情報サイト
OCD(強迫性障害) | NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター
強迫性障害の可能性を調べるチェックリスト
「自分はもしかしたら強迫性障害かもしれない」と不安を感じている方のために、強迫性障害の可能性を調べるチェックリストをご紹介します。
次の項目に当てはまるものがあるかどうかチェックしてみましょう。
- 不安だという理由で施錠や持ち物などを何度も確認する
- 物の配置にこだわりがあり、違っていると何度も直してしまう
- 誰かに強制されているわけではなく、自分でも辞めたいと思っているのに辞められないこだわりがある
- 何度も頭に浮かぶ嫌な考えに日常的に苦しんでいる
- 自分の不安や恐怖、またはそれを避けるための行動で日常生活や仕事に悪影響が出ていると感じる
当てはまる項目が複数ある、もしくは4か5に当てはまる場合はかかりつけ医や心療内科・精神科に受診して相談してみることをおすすめします。
もしも、どの項目にも当てはまらない場合でも、不安な場合は病院に相談してみましょう。
(※このチェックリストは強迫性障害かどうかを診断するものではありません)
強迫性障害以外でも部屋が汚くなりやすい精神疾患や障害9種類
部屋が汚くなる原因は強迫性障害だけではありません。
次の精神疾患や障害でも部屋が汚くなりやすい傾向があります。
| 精神疾患名・障害名 | 部屋が片付けられなくなる事例 |
| うつ病 | 気力・体力が低下して片付ける意欲が沸かなくなる |
| 認知症 | 認知機能の衰えにより、ゴミの分別や整理整頓など今までできていたことが行えなくなる |
| 統合失調症 | 「片付けると恐ろしいことが起こる」など片付けてはいけないと感じる妄想を抱く |
| 溜め込み症 | 物を処分することに強い苦痛を感じるために物を捨てられなくなってしまう |
| 買い物依存症
(依存症の一種で正式な診断名ではない) |
衝動的な買い物を抑えられず、部屋に物が増えすぎてしまう |
| アルコール依存症 | アルコールを飲むと正常な判断ができず、飲まないと頭痛や動悸などの離脱症状があるため片付けができない |
| セルフネグレクト | 自分の身の回りのことに対する意欲が湧かないため、片付けの意欲も沸かなくなる |
| ADHD(注意欠如・多動症) | 一つのことに集中するのが難しく、片付けの途中で他のことを始めてしまって作業が進まない |
| ASD(自閉症スペクトラム) | 感覚が過敏なのでゴミの匂いを強く不快に感じてしまい、ゴミを触れない |
精神疾患や発達障害は併発しているケースも少なくありません。
気になる症状がある場合は、早めに病院などの専門機関へ相談しましょう。
参考ページ:
こころの情報サイト
ためこみ症 – 08. 精神疾患 – MSDマニュアル プロフェッショナル版
モノをため込む心理:誰が,何を
買い物依存について
アルコール健康障害対策|厚生労働省
強迫性障害だと部屋が汚くなる理由

「汚れるのが嫌で何度も手を洗う」など清潔を好むイメージの強い強迫性障害の人が、なぜ部屋を汚くしてしまうのでしょうか?
実は汚れへの強い不安や完璧主義など、潔癖症にもつながりやすい心理的要因が部屋が汚れる理由につながっています。
ここでは強迫性障害だと部屋が汚くなる理由のうち、代表的な3つの理由を紹介します。
理由1:不安で物を捨てられない
強迫性障害だと部屋が汚くなる理由の一つ目は、不安で物を捨てられないことです。
強迫性障害の人は「これを捨てたら後で後悔するかも」「人からもらったものを捨てたらその人に嫌われるかもしれない」など物を処分することについて強迫観念を抱くと、物を処分できなくなってしまいます。
「必要になったらまた買えばいい」「嫌うような人じゃない」と頭ではわかっていても、不安を消すことができません。
不安で物を捨てられなくなってしまうと不要な物がどんどん溜まっていき、部屋の中が散らかってしまいます。
理由2:汚いと感じてゴミに触れない
強迫性障害だと部屋が汚くなる理由の2つ目は、そんなに汚れていない物でも汚いと感じてゴミに触れないことです。
強迫性障害の人に多く見られる強迫観念の一つに「汚染恐怖」「不潔恐怖」があります。
これは汚れることや病気に対して大きな恐怖を感じることで、この恐怖心により人が触った物や床に落ちた物など汚れそうなことを過度に避けるようになります。
この「汚染恐怖」「不潔恐怖」によって、部屋を片付けようとしても床に落ちている物に触れなかったり、触るたびに不安が高まって手を何度も洗ったりしてしまいます。
その結果片付けを進められずに部屋が散らかってしまうのです。
理由3:完璧を目指しすぎて片付けを始められない
強迫性障害の人の中には、完璧を求めすぎて片付けを始められずに部屋が散らかってしまう人もいます。
強迫性障害の人は何か行動を起こす時に手順、スケジュール、規則などを重視しすぎる傾向があります。
この手順、スケジュール、規則を決める際も、次のように様々な不安やこだわりが出てきてしまい、決めるのに多くの時間や気力を消費します。
「こうなったらどうしよう。そうならないためにはこれも準備しておこう」
「Aは絶対に上から2段目の引き出しに入れなきゃいけない。AとBは絶対に一緒に入れなきゃいけないのに、上から2段目の引き出しには入りきらない。どうしよう」
その結果、片付けを始められないまま時間だけが過ぎて、部屋が散らかってしまうようになります。
強迫性障害の方が汚い部屋に住み続けるリスク

「汚い物に触れないから、部屋が散らかっているのはしょうがない」と諦めている人もいるかもしれません。
しかし、汚い部屋に住み続けるといくつものリスクが生じます。
強迫性障害の方が汚い部屋に住み続けるリスクの中から主な3つを解説します。
精神的ストレスなどによる強迫性障害の悪化
汚い部屋に住み続けることで精神的ストレスが増え、強迫性障害が悪化してしまうことがあります。
部屋が汚いと次のような理由からストレスが蓄積します。
- 「片付けなければいけない」というプレッシャーを常に感じている
- 整理整頓できていないので使いたい物がすぐに見つからず、探さなければいけなくなってイライラする
- 「片付けられない自分」に対して否定的な気持ちになる
強迫性障害は日々のストレスの蓄積によってひどくなってしまうことがあり、うつ病や他の不安障害などを併発するリスクも高まります。
ただし、「不潔な物を触りたくない」という恐怖がある中で片付けをすることもストレスになり、何度も手を洗うと手が荒れてかゆみや痛みが生じたりすることもあります。
部屋を片付けることは必要ですが、強迫性障害の症状と相談しながら負担の少ない対処法を選ぶことが重要です。
アレルギーや感染症など健康への悪影響
部屋が散らかってしまうと隅々まで掃除機をかけたり換気をしたりすることも難しくなり、部屋にホコリやカビが増えてしまいます。
ホコリやカビが増えると、アレルギーやぜんそくなどの健康被害を引き起こすリスクが高くなります。
また、食べ残しや生ゴミを放置している場合は害虫が発生することが多く、害虫が家の外から持ってきた細菌などにより感染症のリスクも高まります。
汚部屋・ゴミ屋敷化
片付けられない期間が長くなってしまうとどんどん部屋の中に物が溜まってしまい、汚部屋やゴミ屋敷になってしまう恐れがあります。
一般的に「汚部屋」と「ゴミ屋敷」は以下のような使われ方をしています。
- 汚部屋…部屋の中に物が多く散らかっており、ほとんど足の踏み場もないような状態
- ゴミ屋敷…一部屋だけでなく家中のスペースに物が多く、移動が難しい、水回りが使えないなど生活に支障が出ている状態
部屋の汚れは放置期間が長くなるほど進行し、片付けに必要な労力も増えるため、結果的に片付けがさらに困難になります。
そのため、できるだけ早い段階で対処することが重要です。
強迫性障害で部屋が汚い時の3つの対処法
強迫性障害によって片付けが難しくなっている場合、根性や気合いなど気の持ちようだけでは解決できません。
自分に合った対処法を見つけて取り組むことが大切です。
ここでは、強迫性障害で部屋が汚い時に、現状を改善するための3つの対処法を紹介します。
その1:自力で片付ける
「自分でちゃんと片付けたい」「費用をあまりかけたくない」「他人を家に入れたくない」などの理由から、難しいと感じていても部屋を自力で片付けたいという方もいるはずです。
強迫性障害の方が自力で部屋を片付ける場合は、無理をせずに自分でできる範囲から少しずつ片付けを始めてみましょう。
汚れや不安で手が動かない場合は、手袋やマスクを活用するのもおすすめです。
もしも、目標を達成できなくても「できない自分を責めないこと」を意識することが大切です。
「玄関のシューズボックスの上にあった物を一つ処分できた」とできた部分に注目したり、「目にゴミが入りそうで嫌だったからゴーグルも用意してみよう」などどうしたらできるか工夫してみたりしながら、焦らずマイペースに進めましょう。
自力で片付ける際のコツについては本記事下部『強迫性障害の人が自力で部屋を片付けるための3つのコツ』でもご紹介していますのでそちらもご覧ください。
その2:医療機関や行政に相談する
部屋が片付けられずに悩んだ時は、一人で抱え込まずに医療機関や行政に相談してみましょう。
強迫性障害が原因で片付けができない場合、精神科や心療内科などの医療機関へ相談して治療を受けることで改善する可能性があります。
また、お住まいの地域や状況によっては、役所や保健センターに相談することで福祉支援を受けられる場合もあります。
医療機関や行政で上手く相談できないとお悩みの方は、メモを書いてから相談に行くのがおすすめです。
キレイに文章にまとめなくて良いので、片付けられない原因となっている不安や恐怖を箇条書きで書き出し、それをもって相談に行ってみましょう。
参考ページ:
強迫性障害|こころの情報サイト
認知行動療法(CBT)とは
障害福祉サービス
その3:片付け業者に片付けを依頼する
自力での部屋の片付けが難しい場合は、片付け業者に依頼するという方法もあります。
他人を家に入れることに抵抗がある人は多いと思いますが、プロの片付け業者であれば強迫性障害やゴミ屋敷の片付けに慣れており、プライバシーに配慮しながら安全に作業してくれるため、安心して依頼できます。
片付け作業は全て業者が行ってくれるため、汚い物に触れるストレスを我慢したり何度も手を洗ったりする必要はありません。
業者を選ぶ際は、「心の病気を理解してくれる業者か」「心の病気の人の部屋の片付け実績があるか」を問い合わせ時に確認できると安心です。
安心して依頼できる業者の選び方については以下の記事でも詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
▶汚部屋の片付け代行業者の選び方とは?依頼方法まで徹底解説!- 便利屋サービス21
強迫性障害の人が自力で部屋を片付けるための3つのコツ

「自力で部屋を片付けたい」という方のために、強迫性障害の人が自力で片付けるための3つのコツをご紹介します。
ただし、部屋やご自身の状況によっては、これらのコツを実践しても片付けが難しい場合があります。
その場合は無理して自力で片付けようとせずに、病院や業者に相談するなど他の対処法も試してみてください。
①とりあえず4分片付けてみる
強迫性障害の人は「完璧に計画を立てないと始めてはいけない」と思ってしまいがちですが、もし可能であればとりあえず4分間だけ片付けてみましょう。
もちろん計画を立てずに片付け始めても良いですが、それだと不安という方は「4分間でできる範囲の作業」について計画を立ててみてください。
部屋全体の片付け計画よりもずっと立てやすいはずです。
実際に片付けを始めてみると、気づいたら4分よりも長く片付けができるケースも珍しくありません。
行動することで「やる気を出す脳の部分(側坐核)」が刺激され、モチベーションを高めるホルモン「ドーパミン」が分泌されるからです。
ちなみに4分間というのは、アメリカの心理学者であるレナード・ズーニンが提唱した「最初の4分間だけ作業を始めると、やる気が自然に出てきてその後も継続しやすくなる」という説からきています。
参考ページ:
意欲の神経メカニズム
藤田医科大など、”意欲”スイッチをONにするメカニズムを解明 – 日本経済新聞
②簡単な片付けを習慣にする
部屋全体の片付けは難しくても簡単な片付けならできるという方は、毎日の生活の中に「小さな片付け」を組み込むのがおすすめです。
たとえば、以下のような片付けです。
- 食後にテーブルを拭く
- 帰宅したら郵便物を仕分ける
- 寝る前に床に落ちているものを3つだけ拾う など
そして、小さな片付けでも達成した時には自分をほめてあげましょう。
達成感を感じたり自己肯定感を感じたりすることで、次の片付けへの意欲につながります。
また、少しずつでも部屋がキレイになってくると、部屋の汚さによるストレスが薄れ、強迫性障害の症状も軽減してくる効果が狙えます。
③「保留」「寄付」など捨てない工夫を取り入れる
「捨てるのが怖い」という気持ちは、強迫性障害の人にとって非常に強いものです。
無理に捨てようとすると不安が高まって強迫性障害が悪化する可能性もあるため、「保留」「寄付」など捨てない工夫を取り入れるのがおすすめです。
捨てない工夫の1つ目は「保留ボックス」を作ることです。
捨てられない物は保留ボックスに入れておき、一定期間(1か月など)使わなかったものだけを後で処分するようにします。
一定期間おくことで「これが無くても大丈夫だった」という実績ができ、安心して処分できるようになります。
捨てない工夫の2つ目は「寄付」や「リサイクル」などを利用することです。
寄付やリサイクルを利用すると、自分にとって不要な物でも誰かの下で活躍できるので、罪悪感などを感じずに物を手放せるようになります。
自分が物を捨てられない理由を考えながら、「これなら大丈夫」と安心して物を手放せる工夫を取り入れることで、部屋の物を減らして片付けやすくできます。
強迫性障害の人への周りの人のサポート方法

強迫性障害の人の部屋を片付ける必要があるとき、家族や友人など、周囲の理解と協力も非常に重要です。
一緒に暮らしている人は汚れた部屋を見るとつい怒りたくなるかもしれません。
しかし、無理に片付けをさせようとするのではなく、本人のペースを尊重しながら支えることが改善への近道になります。
気持ちを受け止めてあげる声かけをする
周りの人にとっては現実感の無い内容に感じるかもしれませんが、強迫性障害の人にとって「不安」は非常に深刻なものです。
そのため、「そんなこと気にしないで」「大げさだよ」など周りの人に否定されると、心を閉ざしてしまうことがあります。
まずは強迫性障害の人の不安に対して「不安なんだね」「大変だったね」と共感し、気持ちを受け止めましょう。
「この人になら気持ちを受け止めてもらえる」と安心できる関係が築けると、一緒に片付けたり悩みを話してくれたりと改善に向けた行動が見られるようになってきます。
無理に片付けさせようとしない
強迫性障害の人に対して、決して無理に片づけをさせようとしないようにしましょう。
散らかった部屋を見るとつい「早く片付けて!」と言いたくなるかもしれません。
しかし、本人にとって片付けは強い不安を伴う行為です。
そんな片付けを無理やりやらされようとすると、症状が悪化したり強迫性障害の人と周りの人の信頼関係が崩れる可能性があります。
片付けを促すときは、「一緒に少しだけやってみようか?」など、協力的な言い方を意識しましょう。
少しずつ一緒に片付ける
強迫性障害の人が自分だけで部屋を片付けるのが難しくても、周りの人が手伝えば部屋が片付けられる可能性が高まります。
強迫性障害の人の不安に共感したり、苦手な作業は周りの人が担当したりして一緒に片付けを進めていきましょう。
周りの人が一緒に片付けるときは、「今日は机の上だけ」「10分だけやろう」など、範囲を明確にして取り組むのがポイントです。
また、作業が終わったら「よく頑張ったね」と声をかけて小さな成功を一緒に喜ぶことで、モチベーションにもつながります。
まとめ:強迫性障害が片付けられない原因だと思ったら早めの対処が重要

強迫性障害によって部屋が片付けられないのは、意志の弱さや怠けているせいではありません。
不安や恐怖が強すぎて、自分自身でも思うように行動できない状態なのです。
しかし、部屋が汚いままだと強迫性障害の悪化や健康への悪影響が生じるリスクがあり、片付けないまま長期間放置するほど片付けが困難になるため、早めの対処が重要です。
そんな強迫性障害の人の部屋を最も早く片付けられるのは、片付け専門業者に依頼する方法です。
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